無用の用 2020 10 11

書名 DNAの98%は謎
著者 小林 武彦  ブルーバックス

 あなたの体で無駄な部分はありますか。
たとえば、腹回りのぜい肉は、何の役に立っているのでしょうか。
 生命の仕組みに無駄なものはないと言われていますので、
たとえ、ぜい肉でも何らかの役に立っているかもしれません。
 ところで、「DNAの98%が無駄」と言われた時代がありました。
つまり、DNAの98%の領域が遺伝子の情報を持たない領域だったのです。
これを「非コードDNA領域」と言います。
 この本から引用しましょう。
ヒトゲノムプロジェクトでわかった30億塩基対の全ゲノムのうち、
なんと98%がタンパク質をコードしていない「非コードDNA領域」だったのです。
 これは、多くの研究者の予想以上でした。
なぜかというと、ヒトの体はタンパク質でできています。
 そのため、ゲノムは、
そのタンパク質を指定する情報(コードDNA)がメインだと考えられていたからです。
 実際、ヒトゲノムプロジェクトよりも前に、
ゲノムが決定された細菌や酵母菌では、ゲノムの大半がコードDNA領域でした。
(引用、以上)
 ところで、ヒトとチンパンジーは、
遺伝子部分で比較すると、数パーセントの違いしかないと言われます。
 それにしては、外見や知的活動は、大きく違うでしょう。
数パーセントの違いがヒトとチンパンジーを分けているのか。
そう考えるのは、無理があるでしょう。
 ヒトとチンパンジーの違いを作っているのは、
ジャンク(ゴミ)と言われた「非コードDNA領域」ではないか。
 つまり、「非コードDNA領域」とは、不本意な名称になっているが、
実は、生命の発現において、コントロールタワーになっているのではないか。
 2%の「コードDNA領域」は、単なる設計図であり、
98%の「非コードDNA領域」こそが、司令塔の役割を果たしているのではないか。
今や、「ジャンク」と言われた98%に注目が集まっています。
 さて、こうなってくると、医者から目の敵にされる腹回りの「ぜい肉」は、
何らかの役に立っているのかもしれません。
 医学的には、「メタボリックシンドローム」と言われても、
分子生物学からすると、何らの役に立っているかもしれません。
 生命の仕組みに1%の無駄もないと考えるのが、
分子生物学の基本です。








































































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